薬 名前

薬の名前は1つではありません。薬の名前には、

  • 商品名(販売名)
  • 一般名(薬物名)
  • 成分名
  • 化合物名

これらがあります。

それらの意味や違いについて分かりやすくまとめておきます。

化合物名

薬の中には、薬効を示す化学物質がもちろん入っています。その化学物質の名前が、薬の「化合物名」になります。物質名のことです。

化合物名は、IUPAC命名法という、名前を付ける規則に従ってつけられます。

IUPAC命名法では、化合物の構造に則して化合物の名前を決めます。そのため、複雑な構造の化合物になれば、名前をつけるとそれだけ長い名前になります。「化合物名」は構造に沿って名前を付けているので、「化合物名」から構造を特定することができ、便利です。

しかし、長い化合物名をいちいち使うのは不便です。

タミフル

オセルタミビル

インフルエンザの薬で有名なタミフル(商品名)に入っている、薬効を示す化学物質は、

(-)-Ethyl (3R,4R,5S)-4-acetamido-5-amino-3-(1-ethylpropoxy)cyclohex-1-ene-1-cARBoxylate

といいます。

アレグラ

フェキソフェナジン

花粉症など、アレルギーの薬で有名なアレグラ(商品名)に入っている、薬効を示す化学物質は、

(RS)-2-[4-[1-ヒドロキシ-4-[4-(ヒドロキシ-ジフェニル-メチル)-1-ピペリジル]ブチル]フェニル]-2-メチル-プロピオン酸

といいます。

一般名(薬物名)

化合物名を使うのは、長くて不便です。そのため、その化合物を呼ぶときは、「一般名(薬物名)」が使われます。

「一般名(薬物名)」は、薬効を示す化合物の一般的な名前です。

「一般名(薬物名)」は薬効成分の物質そのものを指し、成分名ともいえます。

薬学を学ぶ上ではこの「一般名(薬物名)」で勉強することになります。この名前は、世の中で広く知られる「商品名(販売名)」とは違います。実際の薬を扱うためには、この「一般名(薬物名)」と「商品名(販売名)」の対応を覚える必要があります。

ちなみに一般名は英語で「 generic name 」といいます。そうです。ジェネリック医薬品の「ジェネリック」は、この一般名generic nameからきています。先発品とジェネリック医薬品(後発品)は、商品名は違っても、入っている成分の一般名は同じだからでしょう。

一般名の決め方

「一般名(薬物名)」は、WHO(世界保健機関)の承認によって決められます。

製薬会社が、研究開発して生まれた薬について、「この名前をつけたい」と提案します。そして、WHOが認めたものが「一般名(薬物名)」になります。

「化合物名」というのは、その化合物に対してIUPAC命名法により決められるため、もちろん承認というのはありません。化合物そのままの名前です。

「一般名(薬物名)」は、化合物名を由来にしているものもあります。

ちなみにこの名前は、

  • 国際一般名(INN:International Nonproprietary Name) : WHO登録の世界共通の名前
  • 医薬品名称調査会承認名(JAN:Japanese Accepted Name) : 日本で定める名前

の2つがあります。

  • タミフル(商品名)の「一般名(薬物名)」は、オセルタミビルリン酸塩
  • アレグラ(商品名)の「一般名(薬物名)」は、フェキソフェナジン塩酸塩
  • ロキソニン(商品名)の「一般名(薬物名)」は、ロキソプロフェンナトリウム水和物
  • 気管支喘息の薬セレベント(商品名)の「一般名(薬物名)」は、サルメテロールキシナホ酸塩

正確にはこのようになりますが、

タミフルの一般名はオセルタミビル

このように「塩」は省略される場合もあります。

最後のサルメテロールというのは、アドレナリンβ2受容体遮断薬という分類の薬物です。アドレナリンβ2受容体遮断薬の語尾には、「ロール」とつくものが多いです。このように、同じ分類の薬は同じ語尾や似たような名前にされます。

そのため、薬の名前を覚えるときは、語尾などから同じ特徴を見つけると覚えやすくなります

商品名(販売名)

「商品名(販売名)」とは、製薬会社がつけた薬の名前で、薬の商品の名前です。「一般名(薬物名)」とは違います。薬価基準に収載されている名称は、「商品名」です。

この名前が一番なじみがあると思います。世の中で広く知られている薬の名前はこちらになります。薬局でもらう薬、店頭で売っている薬の名前は「商品名」です。

製薬会社は、自社製品の薬をより使ってほしいものです。そのため、なるべく印象が残りやすく、言いやすい名前をつけます。製薬会社は、薬の名前1つ作るのにもとても工夫しています。

  • 風邪が「スーッと治る」、ジキニン
  • 「サラッとでる」、サラリン
  • 「便がよくでる」、ヨーデル
  • 「便がするっと出て楽になる」、スルーラック

などあります。

規格

商品名(販売名)として「アレグラ」を挙げても、「アレグラ」には種類があります。

  • アレグラ錠30mg
  • アレグラ錠60mg
  • アレグラOD錠60mg

このように、同じ薬でも剤形や薬剤中の有効成分の量の違いがあります。

この剤形や成分量のことを「規格」といいます。

成分名

「成分名」は、その字のとおりで成分の名前のことです。

薬は、薬効をもつ成分だけでできているわけではありません。いろんな添加物が加えられています。そのため、薬の成分には薬効(有効)成分や添加物などが挙げられます。

薬効成分の名前は、その薬物の名前、つまり「一般名(薬物名)」ということになります。

  • タミフルの薬効成分 : オセルタミビルリン酸塩
  • アレグラの薬効成分 : フェキソフェナジン塩酸塩
  • ロキソニンの薬効成分 : ロキソプロフェンナトリウム

まとめ

花粉症の薬でおなじみのアレグラの場合であれば、

  • 商品名 : アレグラ
  • 一般名(薬物名) : フェキソフェナジン塩酸塩
  • 化合物名 : (RS)-2-[4-[1-ヒドロキシ-4-[4-(ヒドロキシ-ジフェニル-メチル)-1-ピペリジル]ブチル]フェニル]-2-メチル-プロピオン酸
  • 薬効(有効)成分名 : フェキソフェナジン塩酸塩

と、このようになります。

http://kusuri-yakugaku.com/wp-content/uploads/2016/03/6f4062df182e4e468994ca1a36c70db5.jpghttp://kusuri-yakugaku.com/wp-content/uploads/2016/03/6f4062df182e4e468994ca1a36c70db5-150x150.jpgTomくすりってこんなもの薬の名前は1つではありません。薬の名前には、 商品名(販売名) 一般名(薬物名) 成分名 化合物名 これらがあります。 それらの意味や違いについて分かりやすくまとめておきます。 化合物名 薬の中には、薬効を示す化学物質がもちろん入っています。その化学物質の名前が、薬の「化合物名」になります。物質名のことです。 化合物名は、IUPAC命名法という、名前を付ける規則に従ってつけられます。 IUPAC命名法では、化合物の構造に則して化合物の名前を決めます。そのため、複雑な構造の化合物になれば、名前をつけるとそれだけ長い名前になります。「化合物名」は構造に沿って名前を付けているので、「化合物名」から構造を特定することができ、便利です。 しかし、長い化合物名をいちいち使うのは不便です。 例 タミフル インフルエンザの薬で有名なタミフル(商品名)に入っている、薬効を示す化学物質は、 (-)-Ethyl (3R,4R,5S)-4-acetamido-5-amino-3-(1-ethylpropoxy)cyclohex-1-ene-1-carboxylate といいます。 アレグラ 花粉症など、アレルギーの薬で有名なアレグラ(商品名)に入っている、薬効を示す化学物質は、 (RS)-2-ブチル]フェニル]-2-メチル-プロピオン酸 といいます。 一般名(薬物名) 化合物名を使うのは、長くて不便です。そのため、その化合物を呼ぶときは、「一般名(薬物名)」が使われます。 「一般名(薬物名)」は、薬効を示す化合物の一般的な名前です。 「一般名(薬物名)」は薬効成分の物質そのものを指し、成分名ともいえます。 薬学を学ぶ上ではこの「一般名(薬物名)」で勉強することになります。この名前は、世の中で広く知られる「商品名(販売名)」とは違います。実際の薬を扱うためには、この「一般名(薬物名)」と「商品名(販売名)」の対応を覚える必要があります。 ちなみに一般名は英語で「 generic name 」といいます。そうです。ジェネリック医薬品の「ジェネリック」は、この一般名generic nameからきています。先発品とジェネリック医薬品(後発品)は、商品名は違っても、入っている成分の一般名は同じだからでしょう。 一般名の決め方 「一般名(薬物名)」は、WHO(世界保健機関)の承認によって決められます。 製薬会社が、研究開発して生まれた薬について、「この名前をつけたい」と提案します。そして、WHOが認めたものが「一般名(薬物名)」になります。 「化合物名」というのは、その化合物に対してIUPAC命名法により決められるため、もちろん承認というのはありません。化合物そのままの名前です。 「一般名(薬物名)」は、化合物名を由来にしているものもあります。 ちなみにこの名前は、 国際一般名(INN:International Nonproprietary Name) : WHO登録の世界共通の名前 医薬品名称調査会承認名(JAN:Japanese Accepted Name) : 日本で定める名前 の2つがあります。 例 タミフル(商品名)の「一般名(薬物名)」は、オセルタミビルリン酸塩 アレグラ(商品名)の「一般名(薬物名)」は、フェキソフェナジン塩酸塩 ロキソニン(商品名)の「一般名(薬物名)」は、ロキソプロフェンナトリウム水和物 気管支喘息の薬セレベント(商品名)の「一般名(薬物名)」は、サルメテロールキシナホ酸塩 正確にはこのようになりますが、 タミフルの一般名はオセルタミビル このように「塩」は省略される場合もあります。 最後のサルメテロールというのは、アドレナリンβ2受容体遮断薬という分類の薬物です。アドレナリンβ2受容体遮断薬の語尾には、「ロール」とつくものが多いです。このように、同じ分類の薬は同じ語尾や似たような名前にされます。 そのため、薬の名前を覚えるときは、語尾などから同じ特徴を見つけると覚えやすくなります 商品名(販売名) 「商品名(販売名)」とは、製薬会社がつけた薬の名前で、薬の商品の名前です。「一般名(薬物名)」とは違います。薬価基準に収載されている名称は、「商品名」です。 この名前が一番なじみがあると思います。世の中で広く知られている薬の名前はこちらになります。薬局でもらう薬、店頭で売っている薬の名前は「商品名」です。 製薬会社は、自社製品の薬をより使ってほしいものです。そのため、なるべく印象が残りやすく、言いやすい名前をつけます。製薬会社は、薬の名前1つ作るのにもとても工夫しています。 例 風邪が「スーッと治る」、ジキニン 「サラッとでる」、サラリン 「便がよくでる」、ヨーデル 「便がするっと出て楽になる」、スルーラック などあります。 規格 商品名(販売名)として「アレグラ」を挙げても、「アレグラ」には種類があります。 アレグラ錠30mg アレグラ錠60mg アレグラOD錠60mg このように、同じ薬でも剤形や薬剤中の有効成分の量の違いがあります。 この剤形や成分量のことを「規格」といいます。 成分名 「成分名」は、その字のとおりで成分の名前のことです。 薬は、薬効をもつ成分だけでできているわけではありません。いろんな添加物が加えられています。そのため、薬の成分には薬効(有効)成分や添加物などが挙げられます。 薬効成分の名前は、その薬物の名前、つまり「一般名(薬物名)」ということになります。 例 タミフルの薬効成分 : オセルタミビルリン酸塩 アレグラの薬効成分 : フェキソフェナジン塩酸塩 ロキソニンの薬効成分 : ロキソプロフェンナトリウム まとめ 花粉症の薬でおなじみのアレグラの場合であれば、 と、このようになります。