モルヒネはオピオイドμ受容体作動薬であり、鎮痛薬として用いられる。

 

Morphine2DCSD.svgモルヒネ

出典:Wikipedia「モルヒネ」

モルヒネは主に以下のような目的で用いられる。

  • 鎮痛
  • 鎮咳
  • 麻酔前投与
  • 止瀉

痛みを抑えるため。咳を鎮めるため。麻酔前の投与。下痢を止めるため。

モルヒネは内蔵痛(癌仙痛など)に有効である。

作用

モルヒネの作用は、大きく以下の3つに分けられ、それぞれの作用をまとめると次のようになる。

  1. 中枢抑制作用
    • 鎮痛作用
    • 鎮咳作用
    • 呼吸抑制作用
    • 鎮静作用
  2. 中枢興奮作用
    • 催吐作用
    • 縮瞳作用
    • 脊髄反射亢進作用
  3. 末梢作用
    • 平滑筋、括約筋に対する作用
      • 止瀉作用(便秘)
      • 尿閉
      • 胆汁分泌抑制作用
    • ヒスタミン遊離作用

中枢抑制作用

モルヒネの中枢抑制作用としては、以下の作用が挙げられる。

  • 鎮痛作用
  • 鎮咳作用
  • 呼吸抑制作用
  • 鎮静作用

鎮痛作用

モルヒネといえば​鎮痛作用、とも言えるモルヒネの鎮痛作用。

モルヒネの鎮痛作用の機序は、以下のようになっている。

  1. モルヒネが、主に延髄網様体のμ受容体に作用
  2. 脊髄後角ニューロンに対する下行性の痛覚抑制系を活発にさせる
  3. 脊髄後角を抑制し、一次知覚神経からの侵害刺激情報を遮断する

鎮咳作用

モルヒネには鎮咳作用もあり、その作用はコデインよりも強い

モルヒネの鎮咳作用は、延髄咳中枢の抑制によるものである。

呼吸抑制作用

モルヒネを急速に多量投与した場合、呼吸抑制作用も見られる。

これは、モルヒネが延髄のμ受容体に作用 し、呼吸中枢を抑制するためである。

この呼吸抑制は、チェーン・ストークス型呼吸となる。

モルヒネの呼吸抑制は、急性モルヒネ中毒の死因でもある。

鎮静作用

モルヒネには鎮静作用もあり、傾眠傾向や思考力の低下が見られる。

陶酔感(多幸感)が引 き起こされ、不安や緊張が消える。

 

中枢興奮作用

モルヒネの中枢興奮作用には、以下の作用がある。

  • 催吐作用
  • 縮瞳作用
  • 脊髄反射亢進作用

催吐作用

​モルヒネには催吐作用がある。

この催吐作用は、モルヒネが延髄のCTZのD2受容体に興奮的に作用することで現れる。

そのため、D2受容体遮断薬(ク ロルプロマジンなど)によって拮抗される。

縮瞳作用

モルヒネには縮瞳作用もある。

縮瞳作用の機序の流れとしては以下のようになる。

  1. モルヒネが中脳の動眼神経核の受容体を刺激する
  2. 動眼神経(副交感神経含む)が興奮する
  3. 瞳孔括約筋が収縮する(縮瞳)

モルヒネが中脳の動眼神経核の受容体を刺激することで縮瞳が起こるため、モルヒネを点眼したとしても縮瞳は起こらない。

モルヒネの縮瞳作用はいわば副交感神経の刺激によるもののため、抗コリン薬(アト ロピンなど)で拮抗される。

脊髄反射亢進作用

モルヒネには脊髄反射を亢進させる作用もある。

モルヒネを投与したマウスでは、ストラウブの挙尾反応という、尾がS字状になる反応が見られる。

 

末梢作用

モルヒネの末梢作用として、平滑筋、括約筋に対する作用は以下の作用がある。

また、モルヒネはヒスタミンの遊離作用も有する。

止瀉作用(便秘)

モルヒネの主な副作用に、便秘がある。モルヒネによる便秘は以下のような機序で起きる。

  1. モルヒネがμ受容体を刺激し、腸内神経叢からのアセチルコリン遊離を抑制する
  2. 腸の蠕動運動の低下

また、モルヒネには消化管緊張を亢進する作用もある。

  1. 腸管壁からのセロトニンの遊離が促進され、腸管平滑筋の5- HT2受容体刺激される
  2. 消化管緊張の亢進

尿閉

モルヒネにより膀胱括約筋が収縮することで尿路が閉塞し、尿が出にくくなる。

胆汁分泌抑制作用

モルヒネには、胆汁の分泌を抑制する作用もある。

  1.  Oddi括約筋収縮 → 胆管内圧上昇
  2. 十二指腸へ の胆汁排出低下

ヒスタミン遊離作用

モルヒネにはヒスタミンを遊離させる作用もあり、気管支ぜん息の悪化、かゆみの誘発を招く。

作用機序

モルヒネはオピオイドμ受容体に強く作用し、鎮痛作用を示す。κ受容体、δ受容体への刺激もある。

モルヒネは、大脳皮質知覚領、視床、大脳辺練糸などの脳部位における痛覚伝導路を抑制する。

そのほか、中脳水道周囲灰白質等のオピオイドμ受容体に結合し、下行性のセロトニンやノルアドレナリン神経系を活性化する。その結果、痛みの伝導を抑制して鎮痛作用を発現すると考えられている。

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モルヒネは、以下のような症状に用いられる。

  • 術後疼痛
  • 癌性疼痛
  • 心筋梗塞の疼痛などの激しい疼痛時における鎮痛・鎮静

副作用

モルヒネによる、発生頻度の高い副作用は次のようなものがある。

  • 便秘
  • 嘔気嘔吐
  • 悪心
  • 眠気

便秘

特に、便秘は必ずなると言ってよい。

これは、モルヒネが

  • 腸管神経叢でのアセチルコリン遊離を抑制し、
  • さらに腸管壁からセロトニンを遊離させる

ためである。

モルヒネによる便秘は強い。そのため、モルヒネを投与するときは下剤(酸化マグネシウム、センノシドなど)が一緒に用いられる。

嘔気・嘔吐

モルヒネは、ドパミンD2受容体を刺激する。そのため、副作用として嘔気・嘔吐が見られる。

禁忌

モルヒネの禁忌としては、以下がある。

  • 気管支ぜん息、肺気腫
  • 痙れん性疾患

モルヒネはヒスタミン遊離作用があり、気道を収縮させるため、気管支喘息や肺気腫には禁忌である。

また、モルヒネの脊髄反射亢進作用により痙れんを助長させるため、痙れん性疾患には禁忌である。

急性中毒

モルヒネの急性中毒には以下のようなものがある。

  • 呼吸抑制
  • 錯乱・せん妄

モルヒネによって呼吸中枢が麻痺して呼吸が抑制され、チェーン·ストークス 型呼吸になり、呼吸困難で死に至る。

この際の解毒薬としては、モルヒネとμ受容体で競合的に拮抗する以下の薬がある。

  • レバロルファン
  • ナロキソン

また、モルヒネにより錯乱・せん妄が起きた場合は、減量や中止などの処置をする。

解毒薬

モルヒネの急性中毒に、呼吸抑制などがある。それに対する解毒薬として、ナロキソンが用いられる。

ナロキソンはオピオイド受容体のアンタゴニストであり、モルヒネの拮抗薬としてはたらく。

モルヒネの連用

​モルヒネを連用すると、耐性や精神的・身体的依存が形成される。ただし、癌患者の場合は耐性・依存の形成が起こりにくい。

耐性は中枢抑制作用に生じる

モルヒネの耐性は中枢抑制作用に生じ、縮瞳作用や止瀉作用には生じない。まとめると以下のようになる。

  • 耐性を生じる薬理作用:
    • 鎮痛
    • 鎮咳
    • 陶酔
    • 呼吸抑制
  • 耐性を生じない薬理作用:
    • 縮瞳
    • 脊髄反射亢進
    • 止瀉

耐性を生じるのは、鎮痛・鎮咳・陶酔・呼吸抑制といった中枢抑制作用。中枢抑制作用は、モルヒネを投与しても効果が得られない、といった耐性が生じてしまう。

逆に耐性を生じないのは、縮瞳・脊髄反射亢進・止瀉が挙げられる。モルヒネの投与を繰り返しても、これらの作用がなくなるといった耐性は生じない。

そのため、モルヒネ中毒者は縮瞳と便秘に悩まされるのである。

精神的・身体的依存

精神的不安からモルヒネの使用を続けると、精神的依存が高まる。

そして、さらに使用を続けると身体的依存が生じる。

モルヒネの連用を急に中止すると、禁断症状(退薬症候)が現れる。

そのような症状としては、あくび、くしゃみ、流涙、悪心、嘔吐、振戦、不安、不眠、散瞳、せ ん妄などがある。

癌患者は依存・耐性の形成が起こりにくい

癌患者では、モルヒネの依存性・耐性の形成は、健常者よりも起こりにくい。

適正量を長期にわたり癌性疼痛の治療に使用したとしても、精神的依存は臨床上問題にならない。

慢性中毒患者に麻薬拮抗薬は危険

モルヒネの慢性中毒患者にナロキソンといった麻薬拮抗作用を有する薬物を投与すると、禁断症状が現れる。

解毒法としては、漸減療法、メサドン代替療法がある。

抱合反応による鎮痛作用増強

モルヒネは小腸・肝臓にて、3位・6位の水酸基がグルクロン酸抱合されることがある。

グルクロン酸抱合を受ける部位が3位のとき、6位のときで代謝物の活性は次のように異なる。

  • 6位のグルクロン酸抱合体:強い鎮痛作用を示す活性代謝物
  • 3位のグルクロン酸抱合体:不活性代謝物

このようにモルヒネは、6位の水酸基がグルクロン酸抱合を受けると、鎮痛作用が増強される。

非麻薬性(麻薬拮抗性)鎮痛薬との併用

非麻薬性(麻薬拮抗性)鎮痛薬(ブプレノルフィン、ペンタゾシンなど)の作用と、麻薬性鎮痛薬(モルヒネなど)の作用は拮抗する

そのため、麻薬性鎮痛薬を投与中の患者に非麻薬性鎮痛薬投与してはいけない