スコポラミンは副交感神経遮断薬(抗コリン薬)であり、副交感神経を遮断する作用をもつ。

具体的に、スコポラミンはムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害し、瞳孔散大や頻脈を引き起こす。

スコポラミンはヒヨスなどに含まれるアルカロイドで、l-ヒヨスチンのことである

 

作用機序:ムスカリン受容体遮断

スコポラミンはムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害し、副交感神経遮断作用を示す。

スコポラミンはリラックス状態ではたらく副交感神経を遮断することになる。そのため、スコポラミンの作用のイメージは「副交感神経を抑えて興奮させる」である。

スコポラミンは以下のような作用がある。

  • 末梢作用:
    • 眼に対して:
      • 瞳孔散大
      • 遠視性調節麻痺
      • 眼内圧上昇
    • 腺分泌(唾液、汗、胃酸、気道分泌)抑制
    • 腸平滑筋弛緩
    • 膀胱平滑筋弛緩
    • 気管支平滑筋弛緩
    • 頻脈
  • 中枢鎮静作用

末梢作用

スコポラミンはムスカリン受容体を遮断して抗コリン作用を示し、末梢では以下のような作用を示す。

眼に対する作用:瞳孔散大、遠視性調節麻痺、眼内圧↑

スコポラミンは眼に対して以下のような作用を示す。

  • 瞳孔括約筋弛緩 → 瞳孔散大
  • 毛様体筋弛緩
    → 水晶体が薄くなる
    → 遠視性調節麻痺
  • 毛様体筋弛緩
     → シュレム管狭小
     → 眼房水排出↓
     → 眼内圧↑
    ( → 緑内障患者に禁忌)

スコポラミンにより瞳孔括約筋は弛緩し、瞳孔散大(瞳孔が開く)を引き起こす。

また、毛様体筋を弛緩させると水晶体が薄くなり、遠視性調節麻痺を引き起こす。

ほかに、毛様体筋を弛緩させるとシュレム管が狭くなり、眼房水の排出が抑制され、眼内圧が上がる。

そのため、緑内障患者にはスコポラミンは禁忌である。

腺分泌抑制

スコポラミンは副交感神経遮断作用(抗コリン作用)を示し、腺分泌(唾液、汗、胃酸、気道分泌)を抑制する。

腸・膀胱平滑筋弛緩

スコポラミンの抗コリン作用により、

  • 胃腸管の緊張が低下する
  • 胃腸運動が抑制される
  • 膀胱平滑筋が弛緩する

といった作用を示す。

そのため前立腺肥大症に伴う排尿障害患者には、さらに排尿が困難になるため禁忌となっている。

気管支平滑筋弛緩

普通、副交感神経がはたらくリラックス状態では、荒い息をする必要がないため、気管支平滑筋は収縮している。

しかし、スコポラミンが副交感神経を遮断すると、気管支平滑筋を弛緩させる。

頻脈

スコポラミンが心臓のムスカリンM2受容体を遮断すると、心拍数が増加する。

そのため、アトロピンは徐脈性不整脈に用いられる。

中枢作用

スコポラミンの中枢に対する作用は、「鎮静」である。

同じ抗コリン薬であるアトロピンと作用は基本的に同じであるが、中枢に対する作用は異なる。アトロピンは大量投与で中枢興奮作用を示す。

スコポラミン:鎮静
アトロピン(大量):興奮

適応

スコポラミンは気道分泌を抑制するため、麻酔前投与に用いられる。

副作用

  • 口渇
  • 便秘
  • 排尿困難
  • 遠視性調節麻痺
  • 眼内圧上昇

関連