薬の副作用として、横紋筋融解症を引き起こす薬がある。

横紋筋融解症とは、主に骨格筋が融解して細胞内成分が血中に漏れ出る病気で、腎不全につながる重大な副作用である。

横紋筋融解症を引き起こすことがある主な薬をまとめておく。

横紋筋融解症を起こす主な薬
  • スタチン系
  • フィブラート系
  • テオフィリン類
  • キノロン系抗菌薬
  • 低カリウム血症を引き起こす薬

スタチン系、フィブラート系

  • スタチン系
  • フィブラート系

これらの薬は脂質異常症(高脂血症)の治療薬であり、横紋筋融解症を起こす危険性がある。

スタチン系
  • アトルバスタチンカルシウム
  • プラバスタチンナトリウム
  • シンバスタチン
  • フルバスタチンナトリウム
  • ピタバスタチンカルシウム
  • ロスバスタチン
フィブラート系
  • クロフィブラート
  • フェノフィブラート
  • ベザフィブラート
  • クリノフィブラート

横紋筋融解症を起こす機序

スタチン系、フィブラート系が横紋筋融解症を起こす機序について、詳細は不明である。

ただし、筋形質膜の不安定化が原因として考えられている。

参考

スタチン系、フィブラート系はともに血中のコレステロールを下げる作用がある。コレステロール低下により、筋細胞膜が不安定化する。

また、スタチン系はユビキノン(CoQ10)の合成も抑制する。ユビキノンは筋細胞内のATP産生に影響する。

スタチンとフィブラート併用→横紋筋融解症リスク高

スタチン系とフィブラート系の併用により、横紋筋融解症のリスクは高まる

そのため、スタチン系フィブラート系の併用は原則禁忌である。

テオフィリン、キノロン系抗菌薬

  • PDE阻害薬
    • アミノフィリン
    • テオフィリン
  • キノロン系抗菌薬
    • エノキサシン
    • オフロキサシン
    • ガチフロキサシン
    • シプロフロキサシン
    • スパルフロキサシン
    • トスフロキサシン
    • ノルフロキサシン
    • フレロキサシン

これらの薬も横紋筋融解症を引き起こす可能性がある。

横紋筋融解症を起こす機序

これらの薬は細胞内Ca2+濃度を上昇させる。それにより活性酸素が過剰に産生され、細胞障害が起こる。これが横紋筋融解症の発症機序である。

テオフィリン類による発症機序
  1. PDE(ホスホジエステラーゼ)阻害
  2. 細胞内cAMP濃度↑
  3. 細胞内Ca2+濃度↑
  4. 活性酸素産生
  5. 細胞障害
キノロン系抗菌薬による発症機序
  1. 筋繊維の浮腫が引き起こされる
  2. 細胞内Ca2+濃度↑
  3. 活性酸素産生
  4. 細胞障害

低カリウム血症を起こす薬

  1. グリチルリチン製剤・甘草を含む漢方
    • 葛根湯
    • 六君子湯
  2. 利尿薬
    • フロセミド
    • アセタゾラミド
    • トリクロルメチアジド
    • ヒドロクロロチアジド
  3. ステロイド
    • プレドニゾロン
    • 酢酸フルヒドロコルチゾン
  4. 抗真菌薬
    • アムホテリシンB

これらの低カリウム血症を起こす薬は、横紋筋融解症を起こす危険性がある。

横紋筋融解症を起こす機序

これらの薬では、血中カリウム濃度の低下(低カリウム血症)により横紋筋融解症が引き起こされる。

低カリウム血症による発症機序
  1. 血中カリウム濃度↓
  2. カリウムによる筋肉の細動脈の拡張が低下
  3. 筋細胞の酸素不足
  4. 筋細胞壊死

また、

  1. 血中カリウム濃度↓
  2. 細胞膜の興奮性変化
  3. これが慢性化
  4. 細胞膜の破綻
  5. 広範囲に筋繊維の壊死