サリンは揮発性の液体で、毒性が極めて高い毒ガスである。

サリンは非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬であり、非可逆的にコリンエステラーゼ(ChE)を阻害する。

作用機序:非可逆的ChE阻害

サリンは、以下のような流れでコリンエステラーゼ(ChE)を非可逆的に阻害する。

  1. サリンが活性中心であるエステル部と結合する
  2. エステル部をリン酸化する
  3. ChEを非可逆的に阻害する

このリン酸化は不可逆的なもので、持続的にリン酸化されたままになる。

作用の流れ

サリンのコリンエステラーゼ(ChE)阻害により、シナプスにアセチルコリンが蓄積すると、以下のような作用を示す。

  1. ムスカリン様作用:
    • 縮瞳
    • 消化管運動促進
    • 気管支収縮
    • 血管拡張
    • 徐脈
    • 発汗 など
  2. ニコチン様作用:
    • 骨格筋のれん縮 など

アセチルコリンが過剰に蓄積されると、まず縮瞳や徐脈といったムスカリン様作用を示す。

その後、骨格筋のれん縮といったニコチン様作用を示す。

脂溶性が高く、中枢作用も示す

サリンなどの有機リン化合物は脂溶性が高いため、皮膚からも体内に入りやすく、血液脳関門を通過する。

そのため、強い中枢作用を示す。

  • 中枢作用
    • 振戦
    • 運動失調
    • 言語障害
    • 錯乱
    • 幻覚 など

症状

サリンの症状としては、

  • 縮瞳
  • 目の痛み
  • 吐き気
  • めまい
  • 痙れん
  • 呼吸困難

などが挙げられ、吸い込む量が多いと死に至る。

解毒薬:プラリドキシム(PAM)

  • プラリドキシム(PAM) + アトロピン

サリンの解毒には、プラリドキシム(PAM)とアトロピンを併用する。

コリンエステラーゼ(ChE)は、サリンによりエステル部位がリン酸化され、不活性化されている。

プラリドキシム(PAM)は、このリン酸基を切断することでサリンをChEから引き剥がし、ChEを再び活性化させる。

  1. プラリドキシム(PAM)がリン酸基を切断
  2. サリンがChEから離れる
  3. ChE活性が戻る

サリンによりChEが阻害され、アセチルコリンが蓄積されるとムスカリン様作用が強く表れる。

そのムスカリン様作用を弱めるために、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)であるアトロピンが用いられる。

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