サリン
サリンは揮発性の液体で、毒性が極めて高い毒ガスである。
サリンは非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬であり、非可逆的にコリンエステラーゼ(ChE)を阻害する。
作用機序:非可逆的ChE阻害
サリンは、以下のような流れでコリンエステラーゼ(ChE)を非可逆的に阻害する。
- サリンが活性中心であるエステル部と結合する
- エステル部をリン酸化する
- ChEを非可逆的に阻害する
このリン酸化は不可逆的なもので、持続的にリン酸化されたままになる。
作用の流れ
サリンのコリンエステラーゼ(ChE)阻害により、シナプスにアセチルコリンが蓄積すると、以下のような作用を示す。
- ムスカリン様作用:
- 縮瞳
- 消化管運動促進
- 気管支収縮
- 血管拡張
- 徐脈
- 発汗 など
- ニコチン様作用:
- 骨格筋のれん縮 など
アセチルコリンが過剰に蓄積されると、まず縮瞳や徐脈といったムスカリン様作用を示す。
その後、骨格筋のれん縮といったニコチン様作用を示す。
脂溶性が高く、中枢作用も示す
サリンなどの有機リン化合物は脂溶性が高いため、皮膚からも体内に入りやすく、血液脳関門を通過する。
そのため、強い中枢作用を示す。
- 中枢作用
- 振戦
- 運動失調
- 言語障害
- 錯乱
- 幻覚 など
症状
サリンの症状としては、
- 縮瞳
- 目の痛み
- 吐き気
- めまい
- 痙れん
- 呼吸困難
などが挙げられ、吸い込む量が多いと死に至る。
解毒薬:プラリドキシム(PAM)
- プラリドキシム(PAM) + アトロピン
サリンの解毒には、プラリドキシム(PAM)とアトロピンを併用する。
コリンエステラーゼ(ChE)は、サリンによりエステル部位がリン酸化され、不活性化されている。
プラリドキシム(PAM)は、このリン酸基を切断することでサリンをChEから引き剥がし、ChEを再び活性化させる。
- プラリドキシム(PAM)がリン酸基を切断
- サリンがChEから離れる
- ChE活性が戻る
サリンによりChEが阻害され、アセチルコリンが蓄積されるとムスカリン様作用が強く表れる。
そのムスカリン様作用を弱めるために、副交感神経遮断薬(抗コリン薬)であるアトロピンが用いられる。
関連
スポンサーリンク