ネオスチグミンは可逆的コリンエステラーゼ阻害薬である。

ネオスチグミンはフィゾスチグミンの構造を基本として合成されたものである。

作用機序:ChE阻害

ネオスチグミンは、フィゾスチグミンとほぼ薬理作用をもつ。

ネオスチグミンはコリンエステラーゼ(ChE)のエステル部をカルバモイル化し、ChEを可逆的に阻害してアセチルコリンACh)の分解を阻害する。

これによりシナプスにアセチルコリンが蓄積し、副交感神経などの神経伝達を強める。

ネオスチグミンはコリン作動性シナプス間隙のアセチルコリン濃度が上昇させ、さまざまな作用を示す。

作用:イメージは「副交感神経を高める」

間接型コリン作動薬(コリンエステラーゼ阻害薬)であるネオスチグミンの基本的な作用のイメージとしては、

「副交感神経の伝達を強くするため、副交感神経が高まったときの作用を示す」

である。つまり「副交感神経を高める」というイメージである。

体の各部位で、以下のような作用を示す。

  • 眼:
    • 瞳孔括約筋収縮 → 縮瞳(点眼)
    • 毛様体筋収縮 → 眼内圧↓(M3作用)
  • 消化管:
    • 腸管運動↑
    • 唾液、胃液などの分泌↑(M3作用)
  • 心血管系:
    • 心収縮力↓、徐脈(M2作用)
    • 血管拡張 → 血圧↓
  • 骨格筋:
    • 神経筋接合部のAChの分解を阻害
       → 骨格筋収縮(NM作用)
      (NN受容体を直接刺激する作用はない)

眼への作用

  • 瞳孔括約筋収縮 → 縮瞳(点眼)
  • 毛様体筋のM3受容体を刺激
     → 毛様体筋が収縮する
     → シュレム管が開口する
     → 眼房水が流出する
     → 眼内圧↓

ネオスチグミンを点眼すると、瞳孔括約筋を収縮させ、縮瞳(瞳孔が縮まる)を引き起こす。

また、蓄積されたAChが毛様体筋のムスカリンM3受容体を刺激して毛様体筋を収縮させ、結果として眼内圧を低下させる。

消化管への作用

  • 腸管運動↑
  • 消化液(唾液、胃液など)の分泌↑(M3作用)

ネオスチグミンは腸管運動を亢進させたり、消化液(唾液や胃液など)の分泌を促進する作用がある。

心血管系への作用

  • 心収縮力↓、徐脈(M2作用)
  • 血管拡張 → 血圧↓

ネオスチグミンによって蓄積したAChが心筋のムスカリンM2受容体を刺激し、心収縮力の低下や徐脈を引き起こす。

また、血管拡張により血圧の低下も見られる。

骨格筋への作用

  • 神経筋接合部のAChの分解を阻害
     → 骨格筋収縮(NM作用)
    (NN受容体を直接刺激する作用はない)

また、ネオスチグミンは神経筋接合部のAChを蓄積させ、ニコチンNM受容体を刺激することで骨格筋の収縮を引き起こす。

ネオスチグミンにはNN受容体を直接刺激する作用はない。

フィゾスチグミンとの違いは?

ネオスチグミンは、フィゾスチグミンとほぼ薬理作用をもつ。

フィゾスチグミンとの違いを以下に挙げる。

  • 4級アンモニウム化合物である
     → 消化管吸収が悪く、血液脳関門を通過しない
     → 中枢作用がない
  • ニコチン受容体(神経筋接合部のNM受容体、自律神経節のNN受容体)を直接刺激する

したがって、重症筋無力症にはNM受容体を直接刺激する合成ChE阻害薬が用いられる

4級アンモニウム化合物である

フィゾスチグミンは3級アミンであるのに対して、ネオスチグミンは4級アンモニウム化合物である。

  • フィゾスチグミン:3級アミン
  • ネオスチグミン:4級アンモニウム化合物

4級アンモニウム化合物であるネオスチグミンは水溶性が高いため消化管吸収が悪く、血液脳関門を通過しない。

そのため、中枢作用を示さない。

(フィゾスチグミンは中枢興奮作用を示す)

ニコチン受容体を直接刺激する

フィゾスチグミンはニコチン受容体を直接刺激しないが、ネオスチグミンはニコチン受容体を直接刺激する。

  • フィゾスチグミン:ニコチン受容体を直接刺激しない
  • ネオスチグミン:ニコチン受容体を直接刺激する

具体的に、ネオスチグミンは以下のニコチン受容体を刺激する。

  • ニコチン受容体
    • 神経筋接合部のNM受容体
    • 自律神経節のNN受容体

重症筋無力症にはNM受容体を直接刺激するものを。

重症筋無力症には、NM受容体を直接刺激する合成コリンエステラーゼ阻害薬が用いられる。

 

適応

  • 手術後及び分娩後の腸管麻痺・排尿困難
  • 弛緩性便秘症
  • 重症筋無力症、
  • クラーレ剤(ツボクラリン)による遷延性呼吸抑制

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