薬剤(薬物動態)ででてくる式まとめ
薬剤(薬物動態)ででてくる式をまとめています。
目次 (項目へとびます)
単純拡散における透過速度(FiCKの法則)
単純拡散における透過速度は濃度勾配によって決まる。
(Fickの法則により説明される)
$$V=\frac { dQ }{ dt } =\frac { D\cdot K\cdot A }{ h } \cdot ({ C }_{ 1 }-{ C }_{ 4 })$$
- V:透過速度
- Q:薬物量
- t:時間
- D:拡散定数
- K(= C2/C1 = C3/C4):膜/溶媒間の分配係数
- A:膜の断面積
- h:膜の厚さ
シンク条件(C2≫C3=0)では膜透過速度が見かけ上1次速度となる。
$$V=\frac { dQ }{ dt } =\frac { D\cdot K\cdot A }{ h } { C }_{ 1 }$$
Henderson-Hasselbalch式
弱酸性あるいは弱塩基性の薬物における分子形とイオン形の比は、Henderson-Hasselbalch式で算出できる。
弱酸性薬物HAの場合
$$pH=pKa+\log { \frac { \left[ { A }^{ – } \right] }{ \left[ HA \right] } } ={ pK }_{ a }+\log { \frac { \left[ イオン形 \right] }{ \left[ 分子形 \right] } } $$
弱塩基性薬物Bの場合
$$pH=pKa+\log { \frac { \left[ B \right] }{ \left[ { BH }^{ + } \right] } } ={ pK }_{ a }+\log { \frac { \left[ 分子形 \right] }{ \left[ イオン形 \right] } } $$Michaelis-Menten式
能動輸送による膜透過速度は、以下のMichaelis-Menten式で表される。
$$V=\frac { { V }_{ max }\cdot C }{ { K }_{ m }+C } $$- V:膜透過速度
- Vmax:最大膜透過速度
- Km:ミカエリス定数
- C:膜表面での物質濃度
MIchaelis-Menten式に従う輸送において薬物濃度がミカエリス定数に比べて著しく低い領域では、膜透過速度は薬物濃度にほぼ比例し、薬物濃度が高くなると、膜透過速度は飽和し最大値(一定値)となる。
- 薬物濃度≪ミカエリス定数:膜透過速度は薬物濃度にほぼ比例
- 薬物濃度が高い:膜透過速度は飽和し最大値(一定値)
Noyes-Whitney式
固体薬物の溶解速度は以下のNoyes-Whitney式で表される。
$$\frac { dC }{ dt } =k\cdot S\cdot \left( { C }_{ S }-C \right) $$- C:時間tにおける溶解した溶液中の薬物濃度
- k:溶解速度定数
- S:固体の表面積
- Cs:薬物の溶解度
薬物が消化管で溶解するとすぐに吸収される場合、常にCs≫C(シンク条件)が成立するため、以下のように変換される。
$$\frac { dC }{ dt } ≒k\cdot S\cdot { C }_{ S }$$よって、溶解速度に影響する製剤的な因子は主に薬物の表面積(S)と溶解
度(Cs)である。
血漿タンパク質の結合定数
薬物と血漿タンパク質との結合は可逆的なものであるから、1個の血漿タンパク質分子に1個の薬物分子が結合すると(結合部位数は1)、この平衡定数K(結合定数)は以下の式で表される。。
Kが大きいほど薬物の血漿タンパク質との親和性が高いと判断できる。
$$K=\frac { \left[ DP \right] }{ \left[ { D }_{ 1 } \right] \cdot \left[ { P }_{ 1 } \right] } $$- [DP]:結合形薬物濃度
- [D1]:非結合形薬物濃度
- [P1]:遊離タンパク質濃度
Langmuir式
結合定数の式を変形することによりLangmuir式が得られる。
$$\frac { \left[ DP \right] }{ \left[ { P } \right] } =r=\frac { n\cdot K\cdot \left[ D_{ 1 } \right] }{ 1+K\cdot \left[ { D }_{ 1 } \right] } $$- [DP]:結合系薬物濃度
- [P]:タンパク質濃度
- r:タンパク質1分子あたりの結合薬物分子数
- n:結合部位数
- K:結合定数
- [D1] :非結合形薬物濃度
このLangmuir式から、Directプロット、Scatchard(スキャッチャード)プロット、両辺逆数(double reciprocal)プロットの3つのグラフが得られる。
Scatchardプロットや両辺逆数プロットは、結合定数やタンパク質1分子あたりの結合部位数を求めるのに用いられる。
- Langmuir式
- → Directプロット
- → Scatchardプロット
- → 両辺逆数プロット
分布容積 Vd
$${ V }_{ d }=\frac { X }{ C } $$- X:体内薬物量
- C:血中薬物濃度
分布容積Vdとタンパク非結合率f
分布容積が大きい薬物と小さい薬物では、血漿タンパク非結合率fpと組織タンパク非結合率ftの寄与率が異なる。
すなわち、分布容積が大きい薬物ではたfpとftの変化の影響を受けやすい。
一方、分布容積が小さい薬物では、分布容積の値はfp、ftの変化の影響を受けにくくなる。
Vdが大きい薬物(Vdが50L以上)
$${ V }_{ d }≒{ V }_{ t }\frac { { f }_{ p } }{ { f }_{ t } } $$Vdが小さい薬物
$${ V }_{ d }≒{ V }_{ p }$$
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