P糖タンパク質(P-glycoprotein, P-gp, Pgp)は、ABC輸送体の1つである。細胞膜上に存在し、細胞にとって悪い化合物を細胞外へ排泄する。P糖タンパク質は悪いものを体外へ出そうとするため、生体の解毒機構にかかわるタンパク質だといえる。

P糖タンパク質はATPの加水分解エネルギーを利用して能動輸送を行う。つまり、P糖タンパク質は、エネルギーを利用する、ポンプATPaseである。

P糖タンパク質の「P」は、Permeability(透過性)から付けられた。P糖タンパク質が薬剤の透過性を変化させるためである。

P糖タンパク質は次のようにも呼ばれる。

  • ABCB1(ATP-binding Cassette Sub-family B Member 1)
  • MDR1(Multiple drug resistance 1)

発現場所

P糖タンパク質は、次のようにいろんな場所に発現する。

  • 腸(消化管上皮細胞の管腔側膜に局在)
  • 腎臓の近位尿細管
  • 血液脳関門(の毛細血管内皮細胞)
  • 血液精巣関門
  • 血液胎盤関門
  • がん細胞

P糖タンパク質の役割は毒性物質を排泄することであるため、それから連想すれば発現場所は予想できる。

薬剤耐性に関わる

P糖タンパク質は薬剤耐性の形成に関わる。

P糖タンパク質は毒性物質を細胞外へ排泄するが、薬も排泄してしまう場合がある。そうなるとその薬を投与しても効かなくなる。

つまり、P糖タンパク質は薬剤耐性の原因となる。

基質

P糖タンパク質の基質は、比較的脂溶性の高いカチオン性物質である。しかし、その基質認識性は広い。

P糖タンパク質によって排出される薬は次のようなものがある。

  • 抗がん剤(ビンクリスチン、ビンブラスチンなど)
  • 強心配糖体(ジゴキシン)
  • 抗不整脈薬(キニジン、ベラパミル)
  • 免疫抑制剤(タクロリムス、シクロスポリン
  • ニフェジピン(カルシウム拮抗薬)
  • コルヒチン
  • ステロイド
  • 抗HIV薬

シクロスポリン、ニフェジピンンなどはP糖タンパク質によって小腸の管腔側に排出されやすい。

P糖タンパク質の誘導

P糖タンパク質は、薬物によって誘導されるストレスタンパク質でもある。次のような薬によって誘導を受ける。