赤外線(IR)吸収スペクトル法
赤外線(IR)吸収スペクトル法とは、分子に赤外線(IR)を照射して得られるスペクトルから分子の構造を解析する分析法のことである。
- 赤外線(IR)吸収スペクトル法の特徴
- 固体、液体、気体試料いずれも測定可能
目次 (項目へとびます)
測定原理
分子はそれぞれ固有の振動をしている。
分子に波長を連続的に変化させた赤外線(IR)を照射すると、 分子の固有振動と同じ周波数のIRが吸収され、スペクトルが得られる。
こうして得られたスペクトルは分子構造に対応するため、スペクトルから分子構造を解析することができる。
具体的に
O-H結合とC=O結合では、原子間の振動数が違う。そのため、それぞれの部位で異なる波数の赤外線を吸収する。
この原理を利用して、分析する。
まず、様々な波数の赤外線を試料に照射し、波数ごとの光の透過率を連続的に測定する。
こうして得られるスペクトルから官能基の情報を得て、分子構造の解析を行う。
光源
- ネルンスト灯
- グローバ灯
IRスペクトルの測定範囲
IRスペクトルでは、400~4000 cm-1の光(赤外線)の吸収を測定する。
cm-1:波数
特性吸収帯:1500 cm-1以上
400~4000 cm-1のうち、1500 cm-1以上の領域は、特性吸収帯と呼ばれる。
特性吸収帯では、官能基に特徴的な吸収を示すため、このように呼ばれる。そのため、特性吸収帯は官能基の確認に用いられる。
指紋領域:1500 cm-1以下
1500 cm-1以下の領域は、指紋領域と呼ばれる。
指紋領域では、分子構造の違いを敏感に反映する。そのためこのように呼ばれ、指紋領域は化合物の同定などに用いられる。
スペクトルの読み方
横軸:赤外線の波数
縦軸:赤外線の透過率
特徴的な吸収
それぞれの官能基の伸縮振動に由来する吸収の位置は、次のようになる。
- 水酸基(O-H):3400~3200 cm-1付近
- に幅広い吸収帯
- エーテル基(C-O-C):1200 cm-1付近と1100 cm-1付近
- カルボニル基(C=O):1780~1650 cm-1
- カルボキシ基(-COOH)
- C=O:1700 cm-1付近
- O-H:3200~2800 cm-1付近
- アミノ基(-NH2):3400~3200 cm-1付近に幅広い吸収帯
赤外線を吸収しない分子は?
赤外線を吸収しない分子は、O2といった等核二原子分子である。
赤外線吸収について
- 多原子分子の振動数と一致した、振動数をもつ赤外線が吸収される
- 赤外線吸収効率は、分子振動に伴う双極子モーメントの変化量の2乗に比例する
双極子モーメント:分子中の正電荷と負電荷の強度およびその距離から算出される
赤外線吸収の例
- HBr
- 分子内に分極をもつ
- 極性の強い共有結合をもつ
- 分子内の正負の電荷が強く、振動にともなう双極子モーメント変化も大きい
- CO2
- 左右対称:双極子モーメント0
- 対称伸縮振動:双極子モーメント0
- 変角振動 → 双極子モーメント発生、赤外線が吸収
試料調整法
試料調整法は、次のようにたくさんある。
- KBr錠剤とともに粉砕した粉末試料を測定機器にアプライする方法
- 溶液に溶かす方法
- 薄い膜に試料を伸ばして測定する方法 など
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