ヘパリン
ヘパリンとはアンチトロンビンⅢ(ATⅢ)を活性化することにより抗凝固作用を発現する薬である。
静脈血栓症や播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療、人工透析、体外循環での凝固防止などに用いられる。
目次 (項目へとびます)
特徴
ヘパリンNaはグルコサミンとウロン酸のニ糖単位からなる分子量5000~20000の不均一な構造を持つ酸性ムコ多糖である。
作用機序
ATⅢ作用①:トロンビンを中和する作用
ヘパリンはATⅢを活性化することによりトロンビンを減少させ、結果的にフィブリンを阻害することにより凝固系を阻害する(下図)。
ATⅢ作用②:Xa因子阻害
Xaはトロンビンを活性化させる。
ヘパリンを投与することにより、Xaは阻害されトロンビンが減少し、結果的にフィブリンを阻害することにより凝固系を阻害する。
適応
播種性血管内凝固症候群(DIC)
DICは凝固系が亢進しているため凝固系を止めるヘパリンを用いる。DICはATⅢが減少していることが多いため、ATⅢ製剤を併用することが多い。ヘパリンはATⅢと複合体を形成し、ATⅢを活性化させるため、臨床検査でATⅢがあるかどうか確認する必要がある。
静脈血栓症
ATⅢと結合することによりXaを阻害し抗凝固作用を示す。
副作用
ヘパリンは血液をサラサラにし、凝固系を止めすぎるため副作用として出血が考えられる。
そのため出血している患者(血小板紫斑病、血友病等)や出血する可能性のある患者(内臓腫瘍、大腸炎等)には原則禁忌となっている。
注意
TDMの際アミノグリコシド系抗菌薬とヘパリンを併用していると複合体絵を形成し、測定法によっては測定値が低くなることがある。
ヘパリンとワルファリンの違い
ヘパリンの特徴を、血液凝固薬のワルファリンと比較して以下に示す。
|
ヘパリン |
ワルファリン |
作用機序 |
アンチトロンビンⅢの作用増強 |
肝臓でVKと拮抗→プロトロンビン生合成阻害 |
経口投与 |
不可 |
可 |
試験管内 |
有効 |
無効 |
作用発現 |
速やか |
遅行性 |
作用時間 |
短い |
長い |
妊婦への投与 |
可 |
不可 |
解毒薬 |
プロタミン硫酸塩 |
VK |
特徴 |
酸性ムコ多糖(陰性に荷電) |
タンパク結合率高い |
モニターとなる臨床検査値 |
APTT |
PT |
ヘパリン類似薬
薬物名 |
薬理作用・特徴 |
低分子ヘパリン製材 |
・ヘパリンと同様抗トロンビン作用を示す。抗Xa因子作用はヘパリンと同等。抗トロンビン作用はヘパリンより弱く、持続時間が長い。 |
ダナパロイド |
ATⅢによる大Xa因子の疎外作用を増強する。 |
フォンダパリヌクス |
ATⅢによるXa因子活性作用を増強する。 |
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