抑肝散(よくかんさん)
抑肝散は平肝熄風薬である。
- 精神の乱れを改善する処方
- 四逆散(柴胡・甘草・芍薬・枳実)を変えたもの
- 釣藤散と似ている
目次 (項目へとびます)
目的
- 肝の疏泄改善
- 脾胃のはたらき改善
- 内風(肝に発生した風)の抑制
適応症状
- 神経症
- 不眠症
- 小児の夜泣き、かんの虫
- 認知症
- てんかん、パーキンソン病などによる痙攣
- チック、歯ぎしり
- 精神不安
※小児で夜泣きなどがひどく、吐き気があるとき
→ 抑肝散加陳皮半夏(抑肝散 + 陳皮・半夏)を使う
※乳幼児のひきつけ、夜泣き、歯ぎしりに用いるときは「母子同服」(母親も飲む)となっている。これは母親の精神状態が子供に影響を与えるためと考えられている。 (乳幼児の治療についての「保嬰撮要」)
特徴
- 心因性の疾患に用いられ、応用範囲が広い
- イライラ・痙攣・不眠の治療に使われる
- 小児から高齢者まで広く使える
- 鎮静剤として使われることがある
- しかし眠くならないため、車の運転などは可能
- 高血圧、更年期障害などにも用いられる
- 効果が出るまで数日~数週間以上必要になることが多い
構成生薬
- 釣藤鈎(主薬)・・・平肝熄風:内風(肝に発生した風)を抑える
- 柴胡
- 茯苓
- 白朮(蒼朮)
- 甘草
- 当帰
- 川芎
※釣藤鈎は煎じると性質が変わり、効果が低下するため、煎じあがる数分前に入れる(湯薬を作る場合)
※蒼朮でもかまわない(新一般用漢方処方の手引き)
関連白朮と蒼朮の違い
症状を起こす原因・生薬のはたらき
肝臓の気血の流れの悪化
ストレスによって、肝の気・血の流れが悪くなる。
また、脾胃のはたらきが低下しているため、栄養をしっかり吸収できず、気・血の産生が低下している。そのため肝の気血も不足し、さらに流れが悪くなる。
その結果、肝の働きは低下する。
ストレス → 肝の気血の流れ↓
脾胃のはたらき↓ → 気血の産生↓ → 肝の気血↓
→ 肝のはたらき↓
- 川芎・・・行血:血の流れをよくする
- 当帰・・・補血・行血:血を補い、流れをよくする
脾胃のはたらきの悪化
肝は、脾のはたらきを助けている。そのため、肝のはたらきが悪くなると脾の働きも悪くなる。脾胃のはたらきが低下すると、肝のはたらきも悪くなる。(このことを肝脾不和という)
肝のはたらき↓ → 脾のはたらき↓
脾胃のはたらき↓ → 肝のはたらき↓
(肝脾不和)
- 白朮、甘草・・・補気:気を補い、脾胃のはたらきを高める
- 茯苓・・・利水:胃内の余分な水(胃のはたらき低下で生じる)を除いて、胃のはたらきを高める
内風(肝に発生した風)が起こる
肝の気血の流れが悪くなると、陰(血の潤い)が不足する。すると肝はさらに熱を持ち始める(肝はもともと陽気が強い)。その熱で内風という風が起こる(これを肝鬱化風という)。
→ 陰不足
→ 肝の熱↑
→ 内風が起こる
内風により、次の症状が現れる。
- 頭を揺らしたり歯ぎしりを起こし、からだが痙攣する
- 怒りやすく、イライラが強くなる
- 子供では、夜泣き、ひきつけ(疳症)
- 柴胡・・・清熱:肝の熱を冷やす
- 釣藤鈎・・・平肝熄風:内風(肝に発生した風)を抑える
心に熱が伝わる
肝の熱が心に伝わり、発熱しやすい心がさらに熱をもつ。
そもそも心は肝からの血で養われている。肝のはたらきが悪化し、心血(陰)が不足すると心はさらに熱をもつ。
精神をコントロールする心のはたらきが低下するし、さらに肝の内風によるイライラが重なると、神経症になる。
また眠るためにはからだが陰に偏る必要がある。そのため心の陽気が夜も続くと、不眠症になる。
他に、心のはたらきが亢進しすぎると、高血圧になる。
イライラ、神経症、不眠は更年期障害の症状である。
- 肝の熱が心に伝わる
→ 心(発熱しやすい)が熱をもつ - 心・・・肝からの血で養われている
肝のはたらきが悪化し、心血(陰)が不足
→ 心はさらに熱をもつ - 心(精神をコントロールする)のはたらき↓
+ 肝の内風によるイライラ
→ 神経症 - 眠るためには、からだが陰に偏る必要がある
心の陽気が夜も続く → 不眠症 - 心のはたらき↑↑ → 高血圧
更年期障害の症状・・・イライラ、神経症、不眠
- 茯苓・・・安神:心のはたらきを整える
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