分布容積とは、薬物がみかけ上、血中濃度と等しい濃度で均一に分布すると換算したときの占有体容積である。

分布容積は、組織や臓器への薬物の移行性の指標である。分布容積が大きいほど、組織や臓器への薬物の移行性は高い。

薬物の組織や臓器への移行性が高いと、薬物がそちらへ移行している分、血中濃度は低くなる。血中濃度が低いということは、分布容積は大きくなる。

Vd=D/C

Vd:分布容積
D:投与量
C:薬物の血中濃度

薬物の各組織への分布

菱物の各組織への分布は、次のような多くの要因によって決定される。

  • 薬物の物理化学的性質
    • 分子量
    • pKa
    • 脂溶性 など
  • 組織単位質量あたりの血流量
  • 毛細血管の透過性
  • 血漿タンパク質との結合性
  • 組織成分との結合性 など

分布容積が大きくなる要因

上でも述べたように、薬物の組織への移行性が高いと、分布容積は大きくなる。

分布容積が大きい、つまり組織への移行性が高い薬物の特徴は、次のようなものが挙げられる。

  • 脂溶性が高い(組織へ移行しやすい)
  • 血漿タンパク非結合率が高い(非結合形が組織へ移行しやすい)
  • 血液中で分子形(イオン形は組織へ移行しにくい)
    • 酸性薬物のPKaの値が血液中のpHよりも低い場合
      → イオン形の割合が増大するため、組織へ移行しにくくなる

ちなみに、初回通過効果は分布容積とあまり関係がない。

各薬物の分布容積

  • 分布容積=全体液量
    • アンチピリン:細胞膜を簡単に通過→全体液中に均等に分布(細胞内含む)
  • 分布容積>全体液量
    • プロプラノロール
  • 分布容積<全体液量
    • ワルファリン・・・血漿タンパク結合率:大

 

  • 分布容積=血漿容積
    •  血漿タンパクとの結合が非常に強い→ほとんど血漿中に存在
      • インドシアニングリーン
      • エバンスブルー

 

  • 分布容積 大
    • ジゴキシン:
      • 血漿タンパク結合率:小
      • 組織タンパク結合率:大
    • チオペンタール:
      • 特定の組織中に強く結合→蓄積

 

  • 血漿タンパク結合が強い→血漿中薬物濃度>組織中薬物濃度
    • フェニトイン
    • インドメタシン