プロドラッグとは、体内で代謝を受けて作用を示す薬のことである。

プロドラッグ自体には活性が無い(低い)ため、作用は無い。しかしプロドラッグは体内の代謝酵素によって代謝を受けると、活性体となり作用を示す。

プロドラッグの「プロ(Pro)」は、「前の~」という意味である。そのため、プロドラッグは薬効を示す薬(活性体)の前のということである。

薬効を示す薬の化学構造を変えたりしてプロドラッグにすることを、「プロドラッグ化」という。

メリット

  • 吸収を良くする(消化管吸収↑)
  • 副作用減少
  • 作用部位への選択性を向上させる
  • 苦味の軽減
  • 作用を持続させる

プロドラッグ一覧

プロドラッグの例を次に示す。以下のように、プロドラッグが代謝されると活性代謝物となり、薬効を発揮する。

  • プリミドン → フェノバルビタール
  • アザチオプリン → メルカプトプリン
  • イミプラミン → デシプラミン
    • CYP1A2、CYP2C19、CYP3A4による脱メチル化を受けて

目的別

目的別にまとめたプロドラッグのリストを次に示す。

  • 脂溶性↑ → 吸収性↑
    • バカンピシリン、タランピシリン → アンピシリン水和物
      消化管吸収↑)
    • エナラプリル → エナラプリラート
    • カンデサルタンシレキセチル → カンデサルタン
    • セフカペンビボキシル塩酸塩水和物 → セフカペン
    • セフォチアムヘキセチル → セフォチアム
    • オセルタミビル → Ro64-0802
    • ベタメタゾン吉草酸エステル(経皮吸収性↑) → ベタメタゾン
    • フルスルチアミン塩酸塩 → チアミン塩化物塩酸塩(VB1
  • 初回通過効果の回避 → 吸収性↑
    • エチニルエストラジオール → エストラジオール(肝で分解)
    • メチルテストステロン → テストステロン(肝で分解)
  • 消化管内での安定化
    • エリスロマイシンステアリン酸塩 → エリスロマイシン(胃酸で分解)
    • エリスロマイシンエチルコハク酸エステル → エリスロマイシン(胃酸で分解)
      (胃酸中の溶解性↓、胃内での安定性↑) 
  • 苦味軽減(溶解性↓)
    • クロラムフェニコールパルミチン酸エステル → クロラムフェニコール
    • エチル炭酸キニーネ → キニーネ
  • 水溶性↑(溶解性↑)
    • デキサメタゾンリン酸ナトリウム → デキサメタゾン
    • ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム → ヒドロコルチゾン
  • 副作用↓
    • アセメタシン → インドメタシン
    • インドメタシンファルネシル → インドメタシン
      • 消化管に対する副作用↓(胃腸障害↓)
      • ファルネシル:胃粘膜保護
      • 吸収↑も(脂溶性↑ → 胆汁酸により可溶化)
    • イリノテカン塩酸塩水和物 → SN-38
      (肝臓のカルボキシラーゼによる代謝)
    • ジビベフリン → エピネフリン
  • 作用の持続↑
    • プレドニゾロン酢酸エステル → プレドニゾロン
    • エストラジオール安息香酸エステル → エストラジオール
    • エストラジオールプロピオン酸エステル → エストラジオール
    • テストステロンエナント酸エステル → テストステロン
    • テストステロンプロピオン酸エステル → テストステロン
    • テガフール、カルモフール → フルオロウラシル
    • アラセプリル → カプトプリル
    • エノシタビン → シタラビン
    • イリノテカン塩酸塩水和物 → SN-38
      (肝臓のカルボキシラーゼによる代謝)
  • 選択的移行性↑
    • ドキシフルリジン → フルオロウラシル
    • レポドパ(L-Dopa) → ドパミン塩酸塩
    • シクロホスファミド水和物 → ナイトロジェンマスタード
    • アシクロビル → アシクロビル三リン酸
    • ソリブジン → ソリブジン三リン酸
    • サラゾスルファピリジン → 5-アミノサリチル酸+スルファピリジン
      • 大腸で、腸内細菌による代謝(アゾ基の還元
      • 大腸指向性のプロドラッグ